松本隆の作詞法:95%の想像と5%の真実~「世界一受けたい授業」
2018年12月29日、TV番組「世界一受けたい授業」に作詞家の松本隆さんが登場しました。
作詞のコツや秘話、とても面白かったです。文章を書くうえでの参考にしたいけど、とても天才的すぎて真似できるほどには至ってません。いつか真似できたらいいな。
ということで、そのときの番組の内容をご紹介します。
松本隆って誰?
Romanticが止まらない(C-C-B)
ルビーの指環(寺尾聰)
ハイスクールララバイ(イモ欽トリオ)
スニーカーぶる~す(近藤真彦)
赤いスイートピー(松田聖子)
卒業(斉藤由貴)
木綿のハンカチーフ(太田裕美)
硝子の少年(KinKi Kids)
ちょっと古い歌が多いですが、その世代の人なら誰もが知ってる曲ばかりですね。
こんなにヒット曲を出しているとは思いませんでした。
もともとはミュージシャンで、ロックバンドでドラムと作詞を担当していたそうです。
バンド解散後、できる仕事はないかと探していたら、作詞の仕事が舞い込んできたそう。
作詞家としての最初の仕事は、アグネス・チャンの「ポケットいっぱいの秘密」。
この歌は初めて聞いたのですが、タイトルどおりに、歌詞にも秘密があるそうです。
あなた 草のうえ
ぐっすり眠ってた
ねがお やさしくて
すきよって ささやいたの
歌詞の中に「アグネス」が隠れている! こんなことが発想できるなんて、すごいです。
これまでに、400組を超えるアーティストに詞を提供し、作詞数は2100曲。そのうち130曲以上がオリコントップ10入り。うち52曲が1位獲得。
なんともすごい作詞家です。
作詞のコツ
◎歌詞に具体的な数字を入れる
知り合った日から半年過ぎても
◎マイナスな言葉は強すぎるので使わない
幸せ?と聞かないで 嘘つくのは上手じゃない
※「不幸だ」「幸せじゃない」とは言わずに、不幸を伝える
◎「好き」「愛してる」は使わない
煙草の匂いのシャツにそっと寄り添うから
なぜあなたが時計をチラッと見るたび泣きそうな気分になるの
※直接的には言わず、間接的に好きだという気持ちを表現する。ただし、歌詞の一番最後に、「好きよ」と入れることでインパクトを与えることができる。
◎存在しない架空の色を使う
春色の汽車に乗って、海に連れて行ってよ
※黄色の電車というと総武線になってしまい、詩的なイメージが壊れてしまう。
その他に使った色は、「映画色の町」「ロマンス色の会話」「日暮れ色」「雨色」「夢色」など。
95%の想像と5%の真実
人の心をひきつける詞は、95%の想像と5%の真実でできている
◎ルビーの指環:5%の真実
誕生石がルビーなの
※ルビーは、松本隆の誕生石
◎赤いスイートピー:95%の想像
心の岸辺に咲いた 赤いスイートピー
※当時、赤いスイートピーは存在してなかった。白かピンクかしかなかったので、赤いスイートピーは夢物語のこと。
つまり、「心の中の、夢物語」という意味。
注:現在は改良され、赤いスイートピーは存在している
書く自信がなかったときに、一番のヒット作が生まれた
1980年代にバーッと放電したんで、からっぽになった
(「中山のイチバン」2017年放送番組より)
1980年代、ヒット曲を連続で出したことによって、燃え尽きてしまったそうです。
これ以上はできないと思い、10年間の休業生活。本当に、何もしなかったと言ってました。うらやましいことに、印税がたっぷりあったので、働かずに過ごせたそうです。
そして、10年後に復帰。その復帰作は、なんと・・・
Kinkikidsの「硝子の少年」
詩は書けるけど、10年間も休業していた自分が、本当にヒット曲を作れるのか、とても不安だったそうです。もう賞味期限切れなのではないか?と。
ところが、この曲は・・・
今までで一番売れちゃった
自信がないときに、一番のヒット作を生み出すって、なんか不思議ですね。
ひらめきは、突然くる。
何も考えてないところにポンと出てくる
曲のひらめきは、突然、ポンと出てくるそうです。本当にうらやましい話です。
書けない書けない。でも歯医者も行かなくちゃいけないから。まず歯医者行こうって。
で、麻酔されて、治療を受けますね。
ひらめいちゃったんです。ワンコーラス全部。
暇じゃないですか、歯医者って。
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松本隆さんの話、予想以上にとっても面白かったです。
作詞のコツは、かなり参考になりました。
具体的な数字を入れる反面で、特定の電車を想像させないとか、想像上の色や花を創作したりとか、夢と現実のバランスをとったほうがいいということでしょうか。
また、5%の真実というのも面白い話でした。もっと哲学的な話なのかと思ってましたが、自分の誕生石を歌詞に使うとか、そういう真実だとは笑っちゃいました。
だけど、真実が5%だけっていうのは、逆に難易度が高いなと思います。
架空の話のほうが、創るのは大変ですよね。真実を書けばいいなら、どんどん書けるけれど。
95%は想像って、どれだけ想像力が豊かなのでしょう。
想像力がほしいです。
作詞家や作家が、どんなふうに作品を生み出しているのか、その話を聞くって面白いです。出来上がるまでのプロセスっていうのも、人に喜ばれるものですね。
それにしても、今、こんなに素敵な作詞家さんって、いらっしゃるのでしょうか。似たり寄ったりな気がしてしまって、昔の歌はいいなぁなんて思っちゃいますね。